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金剛の意志 校長 鈴木幸平 昨年8月、同窓会報に「やっぱり、清高!」という拙稿を載せてもらった。本校の通称について「清高」と「東高」のどちらが望ましいかを問うたもので、「やっぱり、清高ではないか」と主張したら、多くの同窓生より「共感した」「同感だ」との声をいただいた。同窓生の本校に期待する熟い思いが反響となって伝わってきた思いがした。伝統校の良さとはこういうものだと、嬉しく患った次第だ。 本校は同窓会が盛んである。地元清水はもとより北海道地区から関東地区、関西地区まで、大きなものでも10もの同窓会が存在している。昨年、その大部分の同窓会に出席をさせてもらい、同窓生諸氏から清高の歴史、エピソード、裏話など多くのことを教えていただき深く感謝している。しかしながら、いつも気になることが一つあった。それは本校の校訓についてのこと。卒業して随分の歳月が経過している方もおられることから無理からぬ思いもしたが、同窓生に問うてみると、そのほとんどの答が「何でしたかね」「ちょっと忘れてしまった」「文武両道ではなかったか」「2〜3文の言葉であったような気がする」などであった。 ご案内のとおり、清高の校訓は昭和29年に制定され、3文で表わされている。「1 誠実、清楚、気品ある人格を磨こう。2 自主、自律、旺盛な研究意欲を持とう。3 明朗、闇達、責任感を持って人事を尽そう。」である。人格の陶冶、主体性の堅持、姿勢の在り方が生徒の実践目標という形で表現されている。このような教育理念を否定するつもりは毛頭ない。けれども、その理念を一言で表し記憶に留まり易い表現になっているか、その理念が伝わりやすい形になっているか、という観点で見たとき、残念ながら必ずしもそうではない。同窓生に、そして、残念ながら在校生の一部にもその浸透が充分図られていない状況である。加えて、校訓の在り方について考える時、いくつかの観点から考察する必要であるかと思われる。一般的には、「当該校のこれまでの教育方針や伝統的精神を表しているかどうか」、「現在及び今後の在校生に求められる教育指針を表しているかどうか」という内容にかかわる観点と、「在校生、同窓生等にとって覚えやすく、忘れにくい表現であるかどうか」、「象徴的でしかもシンプルな長さであるかどうか(4〜10字程度)」という表記にかかわる観点が求められる。 このような観点を踏まえて、本校清高の校訓は、どうあるべきか考えてみたい。まず、第一に、知育・徳育・体育の調和を図るとともに、国家社会の有為な形成者として、心身ともに健全な生徒を育成するというこれまでの清高の基本的理念を踏まえた内容とすること。次に、これに加え、これからの清高生に自らの志を貫き、将来各界で指導者として活躍することが期待されることから、「耐え抜く力」「粘り強さ」「一途さ」を表す内容とすることが求められていよう。 また、わかりやすくシンプルな表記を選定するにあたっては、新たな表現を制定するのでなく、伝統校として培われ、継承されてきた文言を活用することが適切ではないかと思う。候補となる言葉にはいくつかあろうが、その中で、長く歌い継がれ、忘れにくい校歌の「金剛の意志」という表現はどうかと考えている。校歌3番にある「金剛の意志・身を鍛ひ徳を琢かん知を積まん」は、多くの同窓生、保護者、教職員から心に響く言葉だと言い継がれてきている。知・徳・体の3つの要素の育成と調和を図りつつ、指導者として粘り強く自らの意志を貫くことの大切さが、リズムを持ってひしひしと伝わってくる。もちろん、現行の校訓については、「実践目標」として位置づけ、清高生の具体的指針として残したい。 その他にも候補対象はあろう。例えば、校庭にある石碑も一考すべき対象となる。まず、「景行仰止」。詩経の車カツの一節からとった言葉で「大道を邁進せよ」との意味だが、この表現からその意味を即座に分かりやすく伝えられるとは言いがたく、さらに、この「仰止」の「止」が「止める」の意でなく助詞であるといった漢文の言い回しもあってか、在校生や同窓生への浸透性という点から難しい。また、安岡正篤氏が揮毫された「百世不朽」については・個人的には好きな言葉ではあるが、戦時中殉職された教職員の英霊を納めた碑であることから、校訓としてはやはり馴染みにくいと言える。なお、「文武両道」は、本校では校是と言われているが、学校の教育方針を具現化するためのある種の普遍的な方策を表したもので、全国の多くの高校で使われており、本校の独自性という視点からすると対象になりにくいと考えられる。 清高に関心を寄せていただく方々には、多くの候補が胸中にあろうと推察するが、どれにもそれぞれの思いの深さは伝わってくるものではある。けれども、同窓生、保護者、教職員、地域の応援団などすべての方々の、これまでの、そして、これからの清高生に寄せる思いは一つである。清高生一人一人が心に抱いた大きな志を実現させるために、たとえいかなる大きな壁に遭遇してもそれに立ち向かい、自らが切り開いていく。そんな強い意志「金剛の意志」を生涯にわたって持ち続けてほしいとの思いだ。その思いを校訓にも求めたい。 (平成22年2月26日) |
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